あなたは知っていますか?渡り鳥がどうして迷わずに目的地にたどり着けるのか。たとえば鳥たちは、星座を道標にするのです。北極星を中心としたおおくま座、こぐま座、カシオペア座。星々をたよりにして、鳥たちは北を目指すのです。鳥たちはそれを、雛の頃に覚えるのです。雛の頃に見た星の位置が、鳥たちの生きる上での道標となるのです。
幼い頃に手を取り合って歩いた思い出があれば、それはいつか道標となって、私たちを導き、巡り合う。
あなたに出会えてよかった。あなたの母になれてよかった。
愛しています。母より。
──Mother 第11話
14年前。中学生の頃、ドラマ「Mother」をリアルタイムで母と見て泣いていた。
Mother。親から虐待を受けた末に捨てられた小学生女児を担任教諭の女性が攫い、新しい名を与え、親子として生きていこうとする物語。
主人公の奈緒が攫った女の子につけた二つ目の名前は「継美(つぐみ)」。
ツグミというのは渡り鳥だと知って、私は当時、鳥の名前を娘につけるなんて変わった主人公だと思っていた。
それから15年経ち、つぐみちゃんよりお母さんの奈緒の方に年が近くなった今わたしは、帰省して両親と野鳥観察に出かけるのが趣味の一つになっている。娘につぐみと名付けた奈緒の気持ちが、あの頃よりわかるような気がする。
あのオスプレイの名前の由来は水辺の猛禽類、魚鷹とも呼ばれる鶚(ミサゴ)という鳥だと知った。水辺にいる鴨みたいな鳥が実はあまり鴨ではなかったことを知った。渡り鳥にロマンを覚えた。
大混雑だった鳥展にも行ってしまった。
鳥展ちょうよかった🫶🏻土日に行く人は絶対に午前中に入館してください、それでも中は牛歩より進まないくらい混んでいたけれど 帰る頃には入場待ちの大行列ができていたので…… あー いいカメラ欲しくなるのわかるなあって気持ちと 仮剥製の可愛さを知ってしまった。ジョウビタキやはり可愛すぎ🫶🏻🫶🏻🫶🏻 pic.twitter.com/rIS1dri9NS
— ささやか (@oyasumitte) 2025年2月15日
今はとにかく、今年覚えたばかりのジョウビタキが可愛すぎる。
尉鶲(ジョウビタキ)。スズメ目ヒタキ科。
極東域で繁殖し、日本で冬を越す冬鳥。尉鶲が可愛くて好きだと何気なく母に打ち明けたら、なんと母の好きな鳥も尉鶲だった。きっと、単に人気のある小鳥ということだ。おそらく。でも嬉しくなってしまった。
血は争えないってこういうこと?
そんな可愛いヒタキの仲間が大活躍する漫画として知ったのが萩岩睦美『銀曜日のおとぎばなし』。何もかも可愛くてたまらない。
そういえば昨年読んでどハマりした漫画、ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない 1 (HertZ&CRAFT)』には、タイトルどおり表紙絵に必ず鳥がいたっけ。それから、おなじく昨年はまってしまった『シャングリラの鳥Ⅰ (cannaコミックス)』も鳥がモチーフだった。
こんなにも鳥の名を冠するものを愛していたと、これまで気づきもしなかったことに、今はただ驚いている。
そう、ドラマ「Mother」の鈴原継美ちゃん。つぐみちゃんもまさに、鳥の名を冠する者だった。演じたのは幼き日の芦田愛菜ちゃん。
鶇(ツグミ)。スズメ目ツグミ科。
シベリアから海を渡ってきて日本で冬を越す冬鳥で、あたたかくなるとまた北へと戻っていく。
北海道は室蘭、凍てつく冬の夜。7歳にして身長たった104cmしかない女の子は、実の母にゴミ袋に入れて捨てられた。
凍えるその手をとり、南へ向かった人。海の渡り方と冬を越せるあたたかい場所を教えたその人が、決して離さないと誓いながら、彼女に渡り鳥の名を与えた愛を思う。
「あなたは捨てられたんじゃない。あなたが捨てるの」
── Mother 第1話
冬が過ぎて、飛び立つ渡り鳥の群れに「私も連れて行って」と号泣していた女の子は、母に捨てられる自分の入るべき赤ちゃんポストを探していた女の子は、渡り鳥の群れに「ここにいるよ」と笑って手を振るようになった。
「母と娘の絆が起こした そんな母性による事件だったのではありませんか」
「そういうの、男の人の幻想です」
「人間には男と女と、それにもう一種類、母親というのがいる。これは我々にはわからんよ」
「わかった?もう思い出しちゃだめ」
「どこ行くの?」
「そうね どこ行こうかしらね」
── Mother 第11話
産みの母、繋いだ母に、育ての母。
泣く泣く我が子の手を離し、最後まで一人きり真実を抱えて去ること。手を取り帰る家を与え、あたたかな愛を注ぐこと。手を繋いで歩いた記憶を、愛された記憶を残すこと。そして渡っていく子のその手を、もう一度離すこと。
全部かたちが違う愛。
そんなドラマ「Mother」がhuluで配信されているそう。TVerで見られるのは今日現在1-3話と10,11話に限られてしまいました。
(追記: 2025/3/12〜 また順次配信されています)
演じ癖がある7歳の幼気な女の子を、当時5歳の芦田愛菜ちゃんが好演していて、わかっていても泣かされます。私が生涯きっと一番好きなドラマ。
一度も見たことがない方はぜひ。
TVerのMother見て泣きすぎて もうサントラで泣ける身体に
— ささやか (@oyasumitte) 2025年3月6日