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ハッピー賢者モードと人生イヤイヤ期を行ったり来たり

働く大人の学びに必要なもの、3選

現代はVUCAの時代である、と言われて久しい。VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をとった語であり、語自体の由来は米軍の対アルカイダ戦にあるという。激しく揺れるこの時代に対応するために必要な能力については、多くの人間が様々な立場から言及しており、その中には大勢の「新入社員に社会を説く偉いオジサン」がいるのである。オジサンたちは言うーーーVUCAの時代の中で、私達も変化し続けなければならない。時代を作っていくのは君たちだ。令和最初の新入社員である君たちには、学びを厭わず、変化を厭わず、時代を強く生き抜ける会社を作っていってほしいーーー。

望ましい変化には学びが必要

人材・組織開発を研究している立教大学経営学部の中原淳教授は、大人の学びを「自ら行動する中で経験を蓄積し、次の活躍の舞台に移行することを目指して変化すること」と定義している。

変化のきっかけは常に行動であり、行動とそれによる経験こそが次の変化への原動力となる。新しい環境や予測できない変化に自らを適応させていく力はキャリアアダプタビリティと呼ばれ、VUCAの時代に不可欠な能力の一つと言えるはずだ。学びを放棄し、学びから逃走し、自らの経験則によって全てを測ろうとすれば、間違いなく時代に取り残される。好奇心や学習意欲を失わず、絶えず成長を求める姿勢が大切だ。今回は中原教授の著作『働く大人のための「学び」の教科書』で示されていた、大人の学びの3原則を紹介したいと思う。

1.背伸びの原則

「今日の背伸びは明日の日常」。背伸びとは、現在の能力では少し難しさを感じることで、自ら頑張ったり他人の助けを借りたりすれば実現不可能ではない目標を立てることであるという。背伸びをすることで、できなかったことがいつの間にかできることになったり苦手だったことが得意になったりする。

挑戦する事柄については、自分が楽しめることかつ他人に感謝されることであればベストだが、必ずしも両方を満たす必要はない。もしもあなたが今「自分が楽しめること」「自分のしたいこと」がわからないのなら、自己の内面を探ろうとするのは一度やめてみてもいいだろう。中原氏によれば「自分がわからない」と思うときには大抵自分が弱っているため、そんなときは自分を掘って抉るのを止めて、まずは他人から感謝されることに手をつけてみるのが良いそうだ。自己分析をするのは、自信を無くして弱った自分が他者からの承認を通して少し回復してからでも十分だ。ポジティブな他者からの言葉をシャワーのように浴びるうちに、余程頑固な性格の持ち主でない限りは自信や自己効力感が高まり、学習や挑戦への意欲へと繋がるだろう。

とにかくまずは、やってみること。それが本当に自分にとって良い背伸びであったのかは、何かに取り組んでみた結果を見つめて、振り返ることでしか判断できないからだ。

2.振り返りの原理

振り返りとは過去の自分の行動を見つめ直し意味付けた上で、これからどうするべきかを自分の言葉で考えることである。何が起こったのか?それは自分にとってどのような意味があったのか?何が良くて何が悪かったのか?これからどうするのか?

また振り返りとは、自分の状況をメタな(上位の)視点に立って眺めることでもあるという。この世には「人に流され、自分が生きた通りに生きてしまう生き方」と「自ら生き方を考え、考えたとおりに生きる生き方」の2通りがある。もしも後者でありたいと思うならば、広い視野を持ち自己を俯瞰することができるメタ視点は欠かせない。

3.つながりの原理

子どもに比べて時間がなく、またそれぞれに偏見や先入観を持っている大人が効果的・効率的に学ぶためには、助けやアドバイスをくれる第三者が特に必要となるのである。学びにおける「つながり」の価値は相手への信頼があって初めて生まれるということは言うまでもないと思うが、中原氏はその相手を「緊張屋さん」と「安心屋さん」に大別している。

緊張屋さんは、気を抜けば背伸びをやめて学びをサボろうとするあなたを「このままでいいのか?」と鼓舞し、ときには煽ることもして成長を促進してくれるような存在。安心屋さんは、その逆だ。自分の成長を感じられずに落ち込むあなたを「そのままで大丈夫!」と肯定してくれる。一方で何かを新しいことを始めようとしたときに「素敵!あなたならきっとできるよ!」と背中を押してくれるのも安心屋さんであるかもしれない。緊張屋さんと安心屋さんに善悪や優劣はなく、単純な悪魔と天使ではない。ありのままを肯定してくれる天使はいつかあなたを微温湯で溺死させるかもしれないし、ときには自信を抉られるような悪魔の声が無ければ伸ばせない手や見られない景色があるかもわからない。信頼できる相手であるという一点さえ満たしていればどちらも等しく大人の学びに必要な存在であり、どちらといつ話すか時と場は選びながらも、バランス良くフィードバックを受けるのがおすすめだ。

大人の学び、7つの行動

どれだけ原理を知って意識の基盤をつくっても、行動が伴わなければ学べない。中原氏は行動の指針として7つを上げているが、これらすべてに取り組もうとする必要はないという。自分に合うかどうか、足りない力を補えるかどうか、やってみたいと思えるかどうかで選択的に進むのが良いだろう。

  1. タフな仕事から学ぶ
  2. 本を1トン読む
  3. 人から教えられて学ぶ
  4. 越境する
  5. フィードバックを取りに行く
  6. 場をつくる
  7. 教えてみる

人生において、仕事をしている時間は考えるまでもなく膨大である。大人が学ぶにあたっては職場での仕事を学びに活かすことが最も効率的だ。学びを得られるのは何も考えずにこなせる楽な仕事ではなく、大変だけれど「いい仕事」だろう。そしておそらく、いい仕事をする人にしか面白くてやりがいのある「いい仕事」は回ってこない。特異な才もないひよっこ新入社員の私は、最初は目の前に用意された仕事に、相手の期待に少しでもプラスアルファの何かをのせて着実に応えていくことで評価を得て、何とか任せてもらう仕事を広げて増やしていくしかないと思っている。

関連記事︰ぼくの言葉が誰れかのことを 少しでも幸せにするんだろうか。 - どんな言葉で君を愛せば、

それから、やはり読書も大切だ。本を読むとは自分の中に地図を持つことであると中原氏は語る。「何から読んでいいのかわからない」と言う人は私のまわりにも少なくないが、とにかく一度書店や図書館に行くかアマゾンを見るかして、興味をひかれる1冊を手にとってみることからおすすめしたい。もちろん選ぶきっかけは自分の興味にこだわらず「この人が薦める本なら読んでみたい」だって構わない。この人なら、と思う人に個人的なおすすめを尋ねるのも良いだろう。ただし、とにかくまず読むことをして、自分なりに趣味志向を持ってからの方がその「おすすめ」の精度は確実に上がるということはお伝えしておきたい。

ちなみに私自身が読む本の7割は自分の興味のままに手に取る本で、残りの3割くらいは誰かが紹介した記事やツイートを見て気になった本になっていると思う。読書が趣味と言えるほどの多読家ではないので、自分と好みが重なる読書家さんが印をつけてくれた地図を頼りに進んでいる。

……さて今回は、現代はVUCAの時代である、などと勿体つけて書き出してはみたものの、学びって結局は老若男女問わず、意欲をもって方法論を含む知識を得て、自分で考えて行動に移して、終わってまた考えて知識を入れて考えて行動に移して…の繰り返しなんだよなあと再確認する結果に終わりました。学ぶのも考えるのも止めずに生きていきたいです。

『働く大人のための「学び」の教科書』は平易な言葉でとにかくわかりやすく書かれています。アマゾンのレビューを見ましたが、現時点では的外れなコメントは無かったように思います。重要なことがよく解説された良著ですが、人によってはわかりやすさの副作用として若干の物足りなさが残るかもしれません。私は好きだったので、本を読む習慣が無い人にも、逆に本を読みすぎて受動的な学習が癖になってしまった「学び迷子」の大人にもおすすめしておきます。

働く大人のための「学び」の教科書

働く大人のための「学び」の教科書

 

最後までお読みいただきありがとうございました。おやすみなさい。さやかでした。

就活、仕事、結婚。人生を優位に進めるタイミングの魔法

こんばんは。さやかです。

以前このブログで、幸運の女神には前髪しかないから前もって準備しておいて、いざ女神と遭遇する瞬間が来たら迷わず掴むのがチャンスを成功に導く方法らしいということを書きました。

関連記事:あのツイートはあなたのことではないけれどそう思わせてしまったならごめんなさい。 - どんな言葉で君を愛せば、

自分が何をしているかは把握していると感じつつ、偶然に対しても心を開いておかなければならない。そして、偶然のチャンスを見つけたとき──すべての歯車がかみ合うクリック・モーメントが訪れたとき──には、そのチャンスに倍儲けできる準備を整えておく必要がある。

フランス・ヨハンソン『成功は“ランダム”にやってくる!チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方(原題 The Click Moment︰Seizing Opportunity in an Unpredictable World)』,阪急コミュニケーションズ,2013年。

チャンスを掴むためには、考えすぎずにとにかく飛び込んでみることも必要だと思っています。でも人生の中には、冷静に考えて最適な決断を下すべき瞬間も確実にあるはずです。ダニエル・ピンク著『When 完璧なタイミングを科学する』によれば、決断というほど大袈裟なものでなくても、正確性や論理性が求められる場面で判断を誤ることを防ぐためには「何をどのように」考えるのかという問題以前に気にするべき点があるといいます。それは「いつ」考えるのかということ。

 

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When 完璧なタイミングを科学する

「論理的判断」は午前中のうちに

人間は住んでいる場所や民族などに関係なく、「ポジティブな気分は午前中に高まり、午後に落ち込み、夕方に再び高まる」という変動を身体の仕組みとして持っているらしいのです。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが実験により「人間は夜よりも午前中の方が無意味な音節を効果的に記憶できた」ことを示してから、研究者たちによって知的活動について様々な調査が行われ、3つの重要な結論が出ました。

  1. 人間の認知能力は1日中同じ状態ではない
  2. この日々の変動は予想以上に大きい
  3. パフォーマンスにはその作業の内容が関係する

詳細は本を読めばわかるので省略しますが、明敏さや注意力、集中が必要とされる分析的内容はほとんどの人にとって午前中が取り組むのに最適な時間であり、注意深さや決断力がさほど必要とされない洞察的仕事やインスピレーションが重要な仕事はむしろ午後にまわす方が良いのです。……とはいえ残念ながら、多くの働く大人は自分の意志で行動する時間を完全にコントロールすることができないはず。最適な時間以外に行動することの弊害を最小限に抑える戦略として2つ紹介されていました。

  1. 意識すること。自分の作業内容と、それと合わない時間帯であることを意識して補正を心がける。
  2. 小さなことに取り組むこと。たまたま空いた午前中の時間を最重要課題に取り組む時間にしたり、休日だけでも最大効果を発揮できるスケジュールにしたり、論理的に考える必要のない家事や雑務は午後に回したり。

 

不況時に就職すると生涯賃金が下がる

また始める時期と方法は私たちが考える以上に大切で、想像よりもはるかに長期的に影響力を持つということを知りました。これは何事も最初が肝心であることを示すために取り上げられた研究結果だったのですが、なかなかにショッキングな話だと思います。

カナダのある研究では「不景気が新卒者に与えるコストは相当額に及び、不公平である」ことがわかった。もっとも未熟な働き手が一番苦しむので、不運な卒業生は「10年間にわたる収入の持続的な減少」に苦しむことになる。やがて傷は癒えるかもしれないが、傷跡は残る。(中略)調査によれば、不景気のときに社会人になった人たちの経営スタイルは、そうでない人たちと比べて保守的だということが判明している。これはおそらく不確かなスタートのもう一つの遺産だと思われる。

ダニエル・ピンク『When 完璧なタイミングを科学する』講談社,2018年,p128。

そしてこのスタートのタイミングも重要でありながらコントロールできない場合は少なくないので、戦略としては弊害を意識して抑えるように考えて、例外になるべく足掻くしかないのかなあと……。

またこの本によれば、高収入を得る最善の方法は、自分の特定のスキルと雇用主の特定のニーズとを適合させることであるといいます。それは新卒の就職先では滅多に起こらないからこそ適職を求めて新たな仕事に就く必要があり、景気が良くないとこの転職が困難になるので高収入を得にくくなり、結果としてやはり不況時に就職した人の賃金は上がりにくいという話になるのでした。さらに「転職で素早いスタートを切る秘訣」としてあげられていたことが、新卒OLの私を含め新しい仕事に就くときに遍く活きる術だと思ったので紹介しておきます。

  • 新しい世界に足を踏み入れる前から、新しい自分になるところを心の中で思い描く。
  • 有意義な成果を出すことに集中し、成果によって発言力をつけてから自己主張する。
  • モチベーションの低下を感じたら根幹をなす業務に取り組みモチベーションを蓄える。
  • 達成できる見込みの高いささやかな目標を設定し、達成したら祝うようにすることでさらなる挑戦へのモチベーションとエネルギーを得て士気を維持する。

 

就活も順番で優位に立っていけ

収入が高ければ高いほど幸せというわけではないように、人生は必ずしも競争ではありません。ただしもしも競うのであれば、いつ競うのかは何をして競うのかと同じくらい重要な問題になります。たとえばわかりやすく競うシチュエーション、面接やプレゼンの場において、優位に立てる順番は科学的にわかっているのです。

順番が早い方が有利なのは、

①投票で選ばれる選挙のような場合

②あなたがデフォルトの選択肢ではない場合

③初頭効果*を利用できるくらい競争相手が少ない場合

④就職面接で他に強力な候補者がいる場合。

*初頭効果…人は複数の情報に触れたとき、最初に触れた情報を記憶しやすいという現象。

逆に順番が遅い方が有利なのは、

①あなたがデフォルトの選択肢である場合

②競争相手の数がとにかく多い場合

③意思決定者が何を望んでいるのかがわからない場合

④競争者のレベルが低い場合。

競争者のレベルについては判断が難しいというか、就活の面接などは特にライバルのレベルなんて読めない場合も多いと思うので難しいところかと思いますが……一日における人間の気分の上下や、人間が一日の中でも保守的になったり革新的になったりすること、そのリズムを知っておくことで、もしかしたら幸運の女神は私達の方を向いてくれるかもしれません。

 

最後に、気になる結婚のタイミングの科学を紹介して終わりたいと思います。「良い結婚」が「離婚しない結婚」であると考えるのであれば、統計がそのヒントを与えてくれています。

  1. ある程度の年齢になるまで待つ。待ちすぎてもいけない。
    アメリカでは25歳で結婚した人は24歳で結婚した人に比べて離婚率が11%低いが、32歳を超えると離婚率はその後10年間毎年5%ずつ上がっていく。
  2. 教育を終えるまで待つ。
  3. 関係が成熟するまで待つ。
    1年間交際した夫婦はそれよりも交際期間が短かった夫婦に比べて離婚率が20%下がる。また、結婚式や婚約指輪に費用をかけるほど離婚率は上がる。

「体感4割の離婚率」を離婚率3〜4割の日本においてものすごいと言えるかどうかはさて置き、結婚にかける費用と離婚率が本当に比例しているとすれば、リッツカールトンでの結婚式やカルティエの指輪なんて全然無くてもいいな。というか比例していないとしても無くていい。自分が一緒に生きていきたいと思える人がいて、一緒に楽しく生きていくのに必要なお金と時間があればいいようなそれで気がします。そんな風に思える相手がいないと何も始まらないので、結婚相手と出会うタイミングの科学についても調べてみたくなりました。

かなりざっくりと書いてきましたが、今回ご紹介したすべては『When 完璧なタイミングを科学する』に記されています。良ければ読んでみてください。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。おやすみなさい。さやかでした。

When 完璧なタイミングを科学する

When 完璧なタイミングを科学する

 
成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

 

参考文献

ダニエル・ピンク『When 完璧なタイミングを科学する』講談社,2018年。

フランス・ヨハンソン『成功は“ランダム”にやってくる!チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方』,阪急コミュニケーションズ,2013年。

ありがちな恋愛の その結末はどれも同じで

こんばんは。さやかです。最近はブログが恋愛の話ばかりになってしまっているなあと危機感を感じつつ、結局今日の内容も恋愛です。もっと学がありそうなブログにしたかったんだけどなあ、と思っている時点で既に学がなさそうなのですけれども。

というわけで今日も恋愛の話ですが、きっかけはある真面目な本との出会いでした。その本は「恋愛で失敗するたびに反省しているはずなのに、結局いつも“さやかは本当に男を見る目だけは節穴だよな”と友人に笑われてしまうような結末に終わってしまうのは何なんだろう」とぼんやり考えていたとき、偶然目の前に現れたのです。

 

なぜいつも“似たような人”を好きになるのか

というのがその本のタイトルで、内容はざっくり言うとパーソナリティ分析で自分の恋愛の傾向と対策を知ろうというものです。彼を知り己を知れば百戦危うからず、彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず危うし。就活だけでなく、恋愛も自己分析で傾向と対策を知れば未来はきっとバラ色!……となれば嬉しいのですけれど、物事がそれほど単純なら誰も悩みませんよね。自己分析は万能ではないし、過信しないように気をつけたいという話は以前にも書きました。

(関連記事:1年前の自分と話せるなら、自己分析の呪いについて忠告したい。 - どんな言葉で君を愛せば、

ちなみにパーソナリティとは、人それぞれでおよそ18歳までに固まる認知や感情、行動の様式のことを言います。日本語で簡単に言えば人格です。人格の半分は遺伝的要因により決定される生まれつきの気質、残りの半分は環境的要因(心理社会的環境要因)によって左右される後天的に身につけた性格であるとされています。

『なぜいつも“似たような人”を好きになるのか』では、いくつかの質問で自分と相手のパーソナリティを9つに分類するようになっていました。

①回避性パーソナリティタイプ

距離をとり親しくなるのを避けてしまう/どうせ自分なんか幸せになれないと思い込む/欲の少ない淡白な草食系人間/好きな人ができにくい/身体的な接触にも過敏

②依存性パーソナリティタイプ

いつのまにか尽くしてしまう/顔色を見て合わせてしまう/自分勝手な相手に貪りつくされる

③強迫性パーソナリティタイプ

義務と責任に縛られる/真面目で責任感が強くルール違反は許せない/筋が通らないことにこだわってしまう

④自己愛性パーソナリティタイプ

自分が主役じゃないと面白くない/思い通りにならないと相手のせいにしてしまう

⑤反社会性パーソナリティタイプ

危険なスリルを求める/暴力や恐怖で相手を支配してしまう

⑥境界性パーソナリティタイプ

自己評価が低く見捨てられないかいつも不安/周囲を試しコントロールする

⑦演技性パーソナリティタイプ

演技や虚言で相手を困らせる/おしゃれでスマートな人やパトロン的な包容力に弱い/ちょっと冷たいくらいの反応にグッとくる

⑧アスペルガータイプ

まるで宇宙人のような存在/動きがぎこちない/神経が細かい/興味のあることに熱中したい

⑨妄想性パーソナリティタイプ

誰も信じられない/身近な人ほど信じられない/傷つけられたことばかりに目を向けてしまう

 

偏りにはグラデーションがある

上の9タイプは、パーソナリティが偏っている方向を示すものです。青色は私自身が、自分に当てはまるように感じている項目でした。本では各項目に点数が振られていて、その点数が高ければ高いほどそのタイプの傾向が強いということになります。偏りの程度は軽い人も重い人もいるはずですし、その偏りが標準の範囲を外れて大きければ「パーソナリティ障害」となる可能性があります。

私が大学で心理学の講義を受けていたとき、教授が口を酸っぱくして「これから各パーソナリティ障害の特性を話しますが、自分がそれに当てはまる気がするからといって、すぐに“障害”だと思わないでください。特性の強さはグラデーションになっていて、多くの人は“そういう傾向がある”というだけの正常な範囲に収まっています」と言っていたのが印象に残っています。「自覚症状がある人ほど障害というほど重いことは多くない傾向すらある」と聞きました。

貶されるより褒められたいと思うのは自己愛性パーソナリティ障害の人だけではないし、酷いことをされた記憶がなかなか消えないのは妄想性パーソナリティ障害の人だけではありません。ただ褒められたいという感情や辛い記憶に支配されて日常生活や人間関係の構築・継続に著しく困難や苦痛が生じているときには、それが“パーソナリティ障害”となります。

私は学生時代の講義内でも軽いパーソナリティ診断を受けましたが、当時も今回も回避性パーソナリティが強めに出ました。回避性パーソナリティ障害の基準をWikipediaから引用すると、

基準1は、批判や拒絶に対する恐れのために、職業、学校活動を避けていること。
基準2は、好かれているという確信がないと親しい人間関係が作れない。
基準3は、親密な関係でも遠慮がちであり、親密となるには批判なしで受け入れられていると確信したり、繰り返し世話をされるということを必要とする。
基準4は、批判などに過敏であること。
基準5は、不適切という感覚や低い自尊心があるため、新しい対人関係では控えめである。
基準6は、自分が劣っていると感じている。
基準7は、新しいことに取り掛かりにくい。

以上の基準の4つ以上を満たす必要がある。

回避性パーソナリティ障害 - Wikipedia

とあり、わたしは基準1,2,3の特性を自覚しています。ただし批判を恐れて社会活動を避けたり新しいことに挑戦できなかったりはしないため、回避性の傾向があるパーソナリティという程度だろうと思います。

 

何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ

というのはカフカさん(Twitter:@kafuka_monchi)による恋愛エッセイのタイトルで、私の憧れる深川麻衣さんがイメージモデルをされています。私はこちらの書籍も、パーソナリティ分析の本を読んだのと同じ日に読みました。

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分析をしたばかりの頭で恋愛エッセイを読むと、どうしても「あ、この行動は○○タイプの傾向が強い人だ」とか「この○○タイプらしい感情は××な行動で抑えるといいんだよな」というように、分析脳で読んでしまいます。それはそれで面白いのですけれど、綺麗な言葉がスッと胸に入ってこなくなるというか、ポエミーな文章に触れてもあまりおセンチな気持ちにはなれなくなってしまうのですよね。

エッセイの趣旨としては「好きな気持ちに素直になったらいい」というメッセージが強く感じられたのですが、自分のパーソナリティと相性があまり良くないパーソナリティというのは確かにあるし、自分の感情に素直になってしまうと人生が狂うこともあるということを認識したばかりだったので、もう「そんな綺麗事言ってもね、」という感情でいっぱい。恋愛って基本的に脳が酩酊状態になって成立するものらしいので、冷静に考えようとしすぎるとそれはそれで上手くいかないのかもしれません。

そしてパーソナリティ分析自体があくまで性格や行動様式の傾向を知るためのものであり、その偏りは一つとは限らないし、偏りがあるからと言って自分を変えなければならないとは限らないし、何より人格というものはそう簡単に変わるものでもありません。自分にどんな偏りがあるのかを知ることは「なぜあのようなことをしてしまったのか」「なぜいつも同じようなパターンで失敗するのか」を考えて、これからの恋愛のヒントを得ようとする試みです。

 

私は誰かに「思ったことは何でも言ってほしい」と言われても、自分が相手に受け入れられていることを実感して関係性に安心することができるまでは、素直に自分の思いを伝えるのは気が引けてしまいます。この「何でも言う」というのは私が最も苦手とすることの一つなのです。つい最近も「私は何でも言うということが苦手で、出会って間もない相手にそれができるようになるまで時間がかかります」ということを相手に相談することにも時間がかかってしまいました。それでも、恋人の負担になりたくなくて寂しいときに寂しいと言わずにいたら寂しいと思うことに疲れて相手への好意ごと消えてしまった昔よりは、一歩進めたと思いたいです。そもそも「会いたい」と思ったときに会えるようだと会うことにもすぐに飽きてしまう自分の性格もわかってきたので、会いたいと思って、それを相手に率直に言えて、でも今すぐ会うのは無理だね、くらいの状況がちょうど良いのかもしれません。現状としては付き合っている人に会いたいとは言えないし、そういえば会いたいと言いたい気持ちすらいつのまにか失……あれ?もしかして私、全然成長していない?

 

なぜいつも“似たような人

なぜいつも“似たような人"を好きになるのか

 
何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ

何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ

 

参考文献

岡田尊司『なぜいつも“似たような人”を好きになるのか』青春出版社,2014年。

カフカ『何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ』KADOKAWAメディアファクトリー,2019年。

(タイトルの「ありがちな恋愛のその結末はどれも同じで」は、乃木坂46の「ありがちな恋愛」という曲の一節です。)