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働く大人の学びに必要なもの、3選

現代はVUCAの時代である、と言われて久しい。VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をとった語であり、語自体の由来は米軍の対アルカイダ戦にあるという。激しく揺れるこの時代に対応するために必要な能力については、多くの人間が様々な立場から言及しており、その中には大勢の「新入社員に社会を説く偉いオジサン」がいるのである。オジサンたちは言うーーーVUCAの時代の中で、私達も変化し続けなければならない。時代を作っていくのは君たちだ。令和最初の新入社員である君たちには、学びを厭わず、変化を厭わず、時代を強く生き抜ける会社を作っていってほしいーーー。

望ましい変化には学びが必要

人材・組織開発を研究している立教大学経営学部の中原淳教授は、大人の学びを「自ら行動する中で経験を蓄積し、次の活躍の舞台に移行することを目指して変化すること」と定義している。

変化のきっかけは常に行動であり、行動とそれによる経験こそが次の変化への原動力となる。新しい環境や予測できない変化に自らを適応させていく力はキャリアアダプタビリティと呼ばれ、VUCAの時代に不可欠な能力の一つと言えるはずだ。学びを放棄し、学びから逃走し、自らの経験則によって全てを測ろうとすれば、間違いなく時代に取り残される。好奇心や学習意欲を失わず、絶えず成長を求める姿勢が大切だ。今回は中原教授の著作『働く大人のための「学び」の教科書』で示されていた、大人の学びの3原則を紹介したいと思う。

1.背伸びの原則

「今日の背伸びは明日の日常」。背伸びとは、現在の能力では少し難しさを感じることで、自ら頑張ったり他人の助けを借りたりすれば実現不可能ではない目標を立てることであるという。背伸びをすることで、できなかったことがいつの間にかできることになったり苦手だったことが得意になったりする。

挑戦する事柄については、自分が楽しめることかつ他人に感謝されることであればベストだが、必ずしも両方を満たす必要はない。もしもあなたが今「自分が楽しめること」「自分のしたいこと」がわからないのなら、自己の内面を探ろうとするのは一度やめてみてもいいだろう。中原氏によれば「自分がわからない」と思うときには大抵自分が弱っているため、そんなときは自分を掘って抉るのを止めて、まずは他人から感謝されることに手をつけてみるのが良いそうだ。自己分析をするのは、自信を無くして弱った自分が他者からの承認を通して少し回復してからでも十分だ。ポジティブな他者からの言葉をシャワーのように浴びるうちに、余程頑固な性格の持ち主でない限りは自信や自己効力感が高まり、学習や挑戦への意欲へと繋がるだろう。

とにかくまずは、やってみること。それが本当に自分にとって良い背伸びであったのかは、何かに取り組んでみた結果を見つめて、振り返ることでしか判断できないからだ。

2.振り返りの原理

振り返りとは過去の自分の行動を見つめ直し意味付けた上で、これからどうするべきかを自分の言葉で考えることである。何が起こったのか?それは自分にとってどのような意味があったのか?何が良くて何が悪かったのか?これからどうするのか?

また振り返りとは、自分の状況をメタな(上位の)視点に立って眺めることでもあるという。この世には「人に流され、自分が生きた通りに生きてしまう生き方」と「自ら生き方を考え、考えたとおりに生きる生き方」の2通りがある。もしも後者でありたいと思うならば、広い視野を持ち自己を俯瞰することができるメタ視点は欠かせない。

3.つながりの原理

子どもに比べて時間がなく、またそれぞれに偏見や先入観を持っている大人が効果的・効率的に学ぶためには、助けやアドバイスをくれる第三者が特に必要となるのである。学びにおける「つながり」の価値は相手への信頼があって初めて生まれるということは言うまでもないと思うが、中原氏はその相手を「緊張屋さん」と「安心屋さん」に大別している。

緊張屋さんは、気を抜けば背伸びをやめて学びをサボろうとするあなたを「このままでいいのか?」と鼓舞し、ときには煽ることもして成長を促進してくれるような存在。安心屋さんは、その逆だ。自分の成長を感じられずに落ち込むあなたを「そのままで大丈夫!」と肯定してくれる。一方で何かを新しいことを始めようとしたときに「素敵!あなたならきっとできるよ!」と背中を押してくれるのも安心屋さんであるかもしれない。緊張屋さんと安心屋さんに善悪や優劣はなく、単純な悪魔と天使ではない。ありのままを肯定してくれる天使はいつかあなたを微温湯で溺死させるかもしれないし、ときには自信を抉られるような悪魔の声が無ければ伸ばせない手や見られない景色があるかもわからない。信頼できる相手であるという一点さえ満たしていればどちらも等しく大人の学びに必要な存在であり、どちらといつ話すか時と場は選びながらも、バランス良くフィードバックを受けるのがおすすめだ。

大人の学び、7つの行動

どれだけ原理を知って意識の基盤をつくっても、行動が伴わなければ学べない。中原氏は行動の指針として7つを上げているが、これらすべてに取り組もうとする必要はないという。自分に合うかどうか、足りない力を補えるかどうか、やってみたいと思えるかどうかで選択的に進むのが良いだろう。

  1. タフな仕事から学ぶ
  2. 本を1トン読む
  3. 人から教えられて学ぶ
  4. 越境する
  5. フィードバックを取りに行く
  6. 場をつくる
  7. 教えてみる

人生において、仕事をしている時間は考えるまでもなく膨大である。大人が学ぶにあたっては職場での仕事を学びに活かすことが最も効率的だ。学びを得られるのは何も考えずにこなせる楽な仕事ではなく、大変だけれど「いい仕事」だろう。そしておそらく、いい仕事をする人にしか面白くてやりがいのある「いい仕事」は回ってこない。特異な才もないひよっこ新入社員の私は、最初は目の前に用意された仕事に、相手の期待に少しでもプラスアルファの何かをのせて着実に応えていくことで評価を得て、何とか任せてもらう仕事を広げて増やしていくしかないと思っている。

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それから、やはり読書も大切だ。本を読むとは自分の中に地図を持つことであると中原氏は語る。「何から読んでいいのかわからない」と言う人は私のまわりにも少なくないが、とにかく一度書店や図書館に行くかアマゾンを見るかして、興味をひかれる1冊を手にとってみることからおすすめしたい。もちろん選ぶきっかけは自分の興味にこだわらず「この人が薦める本なら読んでみたい」だって構わない。この人なら、と思う人に個人的なおすすめを尋ねるのも良いだろう。ただし、とにかくまず読むことをして、自分なりに趣味志向を持ってからの方がその「おすすめ」の精度は確実に上がるということはお伝えしておきたい。

ちなみに私自身が読む本の7割は自分の興味のままに手に取る本で、残りの3割くらいは誰かが紹介した記事やツイートを見て気になった本になっていると思う。読書が趣味と言えるほどの多読家ではないので、自分と好みが重なる読書家さんが印をつけてくれた地図を頼りに進んでいる。

……さて今回は、現代はVUCAの時代である、などと勿体つけて書き出してはみたものの、学びって結局は老若男女問わず、意欲をもって方法論を含む知識を得て、自分で考えて行動に移して、終わってまた考えて知識を入れて考えて行動に移して…の繰り返しなんだよなあと再確認する結果に終わりました。学ぶのも考えるのも止めずに生きていきたいです。

『働く大人のための「学び」の教科書』は平易な言葉でとにかくわかりやすく書かれています。アマゾンのレビューを見ましたが、現時点では的外れなコメントは無かったように思います。重要なことがよく解説された良著ですが、人によってはわかりやすさの副作用として若干の物足りなさが残るかもしれません。私は好きだったので、本を読む習慣が無い人にも、逆に本を読みすぎて受動的な学習が癖になってしまった「学び迷子」の大人にもおすすめしておきます。

働く大人のための「学び」の教科書

働く大人のための「学び」の教科書

 

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