どんな言葉で君を愛せば|@oyasumitte

ハッピー賢者モードと人生イヤイヤ期を行ったり来たり

ミーハーなりの好きな日本酒の探し方

日本酒が好きです。お酒には強くないし、好きなだけでべつに詳しくもない。ただ日本酒を飲むのは好き。

それだけの理由で、而今という日本酒の写真をXのアイコンに設定して2年ほど経ちました。ジコンと読みます。

最近、友人が「三重県のじこんというお酒がおいしいらしい」と初めて聞いたかのように投稿していて、ほんの少しショックでした。三重県の而今というお酒がおいしいこと、私がもっと早くあなたに伝えたらよかった!

 

そういえば、昔こんな質問ももらっていました。

f:id:oyasumitte:20240307213302j:image

元々日本酒が大好きだったわけでも、未だ専門家でもないミーハーなりに、私が好きな日本酒について改めて書いてみたいと思います。

 

 

而今というお酒が美味しいらしい

まず、アイコンにしているこのお酒について。

 

而今 純米吟醸山田錦無濾過生(おそらく2017BY)は、6年前、私がはじめて美味しいと思った日本酒です。

当時大学生だった私は、安い居酒屋の「日本酒」とだけ書かれたお酒とか、室内なのにブルーシートを敷くタイプの飲み会で開ける常温の日本酒しか知らず、日本酒は美味しくないと思っていました。

小料理屋さんで父と飲んでいたその日も、ビールと果実サワーばかり。見かねた父に「無理かどうかはおいしい日本酒を飲んでから決めればいい」とすすめられ、一口だけ、と渋々飲んだのがよく冷やされた而今の山田錦。それが美味しくて美味しくて!

そこから日本酒を飲む機会が増えていきました。而今が美味しくなければ今の私はなかったので、私にとってずっと特別なお酒です。

 

 

ところで、特別って便利な言葉ですよね。好きでもないのに好きだとか、一番ではないのに一番だとか言ってしまうと嘘になるけれど、君は特別だって言葉自体に中身はないから何がどう明らかになっても嘘には成らず。空っぽの言葉に勝手に期待したのそっちだよねって、確信的に受取側に委ねるずるい言葉。ずるい。何の話?

 

 

そう、特別と一番好きは別という話でした。

而今 純米吟醸 山田錦無濾過生は私にとって特別なお酒ですが、今の私が一番好きなのはこちら。花邑 純米大吟醸愛山というお酒です

 

 

日本酒の名前、長すぎ問題

而今純米吟醸山田錦無濾過生に、花邑純米大吟醸愛山。日本酒をほとんど飲まない人からすると呪文のように映るかもしれません。一つずつ分解してみます。

 

「而今」「花邑」

これが銘柄です。いわゆるお酒の名前ですね。而今は三重県の木屋正酒造が作っているお酒、花邑は秋田県の両関酒造が作っているお酒です。

 

「純米吟醸」「純米大吟醸」

これは特定名称。早い話がお酒の作り方のタイプです。

お米をどれほど磨いているかと、後からアルコールを加えているかの2軸で8種類に分かれ、法律で定められた一定の基準を満たしたお酒だけが表示できます。(詳しくはこちら: 国税庁 種類の表示義務 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2022/pdf/050.pdf

純米吟醸はそこそこお米を磨き、醸造アルコールを添加しないで作ったお酒。純米大吟醸は純米吟醸よりもお米を磨き、醸造アルコールを添加しないお酒です。

 

「無濾過」「生」

これも製法を表しています。無濾過は濾過という雑味などを取り除く工程を行っていないこと。生は、火入れという低音加熱殺菌の工程を行わないお酒ということ。無濾過で味は複雑に、生だとよりフレッシュになる傾向があると思います。

 

「山田錦」「愛山」

これは原料のお米の種類で、それぞれヤマダニシキ、アイヤマと読みます。

山田錦は酒米の王様と呼ばれ、生産量が最も多く人気も高いです。愛山はほぼ兵庫県でしかつくられず、幻の酒米とか酒米のダイヤモンドという異名があるくらい生産量が少ないお米です。

 

 

お米の産地とお酒の関係

ところで、お米どころは日本酒が美味しいとよく言われますよね。秋田、新潟、富山あたりが浮かぶでしょうか。

主原料であるお米とお水が美味しければ当然お酒も美味しくなる説。一理あると思いますし、その土地のお米を食べ、その地のお水を飲んで美味しさを知ってから、酒蔵や地元のお店で飲むお酒は、実際格別に感じます。

 

一方で、地域の名を冠するためにはその地域で育てたブドウを使う必要があるワインと違い、日本酒はどこのお米を持ってきて作っても、お酒を醸した場所の地酒になります。

新潟のお米を使って神奈川県で作られたお酒は、神奈川県の地酒。だから、と言うのは失礼かもしれませんが、一般にお米を作っているイメージがない県にも、美味しいお酒がたくさんあります。神奈川県の残草蓬莱(ザルソウホウライ)や、埼玉県の花陽浴(ハナアビ)、彩來(サラ)とか。

 

お米の品種や産地について表示義務はないため、何もかも伏せているお酒から、品種だけでなく産地の特定地区まで載せているお酒まで様々です。

而今 純米吟醸 東条山田錦、而今 純米吟醸 吉川山田錦。而今 きもと 東条秋津山田錦、而今 きもと 赤磐雄町木桶。

東条山田錦と吉川(ヨカワ)山田錦、東条秋津山田錦は、いずれも兵庫県特A地区という“最高位”の良質なお米がとれる地区産のお米であることを表しています。赤磐雄町(アカイワオマチ)は、岡山県の赤磐地域で育てられた雄町というお米です。

直線距離で20kmしか離れていないという東条山田錦と吉川山田錦の而今同士を飲み比べて、実際に味が違ったときは、何をされたのかわかりませんでした。ミーハーでもわかるくらい味が違うのです。

而今は三重のお酒なので、これらは四本ともお米が県境をまたいでいます。

 

而今 純米吟醸 三重山田錦 

こちらはお米もお酒も三重県伊賀地方から出ている、地域密着パターン。

県外にせよ県内にせよ、高評価がついている産地の明記によってお米の質を担保し、お酒のおいしさや味わいをイメージさせているという点では同じかなと思います。ミーハーに産地の話は難しいので、書いてあったら拘ってるんだな程度の認識で良い気がします。

 

 

初心者におすすめの日本酒

オタク早口で書いてきましたが、ここで一番最初の「三重県のじこんというお酒が美味しいらしい」という情報に戻りましょう。

 

確かに而今というお酒は美味しいです。人気もあります。

結論から言えば、好みとか何もわからず、とりあえず日本酒を飲んでみたいのなら、而今は良い選択肢だと思います。

而今の純米吟醸を飲んでください

 

而今とひとくちに言っても、純米吟醸だったり純米酒だったり、無濾過生だったり火入れだったり、山田錦だったり吉川山田錦だったり雄町だったり赤磐雄町だったり、さらに生酛だの木桶だの……いろいろありましたよね。当然、味や香りは異なります。

作り方もお米もこんなにバリエーションがある。それを鑑みると「而今、美味しいよね」「わかる」という会話において、全く同じお酒の話をしていることはそう多くないはず。

一方で「而今の純米吟醸山田錦無濾過生、美味しいよ」とか「花邑の純米大吟醸愛山が一番好き」などと完全に特定して話したところで、それがいつでもどこでも飲めるわけではない。断定しすぎるのも不親切です。

 

好きな日本酒だとかおすすめの日本酒だとかいう質問で求められているのは、銘柄だと思います。だから答えとしては、而今を飲んでください、となるのですけれど。じゃあなぜ而今の純米吟醸を推すかというと、個人的な思い入れ以外にも一応理由があります。

中部地方の純米吟醸が、ちょうどいいと思うのです。

 

ざっくり、本当にざっくり雑に言うと、東にいくほど日本酒は綺麗な味になりやすくて、西にいくほど豊満な味になりやすいように思います。本当はこんなこと一概に言えるわけはないのですが、知識の足りないミーハーなりに、一つ一つのお酒ではなく全体を見たとき、何となくそういう傾向はありそうだなと。

 

而今の地元、三重県は中部・東海地方。西日本か東日本かで言えば西ですが、極端に西の、例えば長崎のお酒を飲むより標準っぽい感じが伝わるでしょうか。

そして純米吟醸は、特定名称酒を精米歩合で並べたとき、一番お米の表面を削る純米大吟醸と、あまり削らずタンパク質が多く残ったお米でつくる純米酒に挟まれた真ん中のお酒。これもまたちょうどよいのでは、と思うのです。

 

より自分好みの日本酒を探すにあたっては、最初からクラクラするような情報量と向き合うよりも、とにかくまず何か飲んでいただいて、それに対する感想を添えつつ、お店の方や日本酒に詳しい人に聞いて好みの系統を絞っていくのが結局は近道だと思います。その入口としてちょうど良く、かつ、シンプルに美味しいので人を日本酒から遠ざけないお酒が、而今の純米吟醸かなと。

 

……とはいえ、ワインが大好きならワイン酵母を用いた日本酒や、ワインに学ぶ日本酒に手を出す方が向いている人もいるでしょう。埼玉のARROZとか、愛知の醸し人九平次純米大吟醸山田錦とか。私も大好きです。

 

普段、果実系のサワーばかり飲んでいる人なら、フルーティーでシュワっとしている低アルコールの日本酒が良さそうかしら。長野のボーミッシェルコットンキャンディーとか、千葉の福祝スパークリングとか。広島の賀茂金秀特別純米13、新潟の醸す森生酒あたりも、ジューシーで大好きです。

 

 

地域、特定名称、キーワード

私が知らないお酒を飲んでみるときにヒントにしているのは、どこで、どれくらい磨いたお米でつくられたお酒なのかという二点。

これはほぼお酒の名前からわかります。而今 純米吟醸 山田錦無濾過生から抜き出すと、三重県の純米吟醸という部分。花邑 純米大吟醸 愛山なら、秋田県の純米大吟醸の部分です。

東へいくほどお酒としては綺麗に澄みがちで、お米は磨くほど香りとお米自体の甘味が前に出てきがち。純米酒よりも、アルコールを加える本醸造酒の方が甘味が薄く遠くてドライになりがち……な気がする。気がするだけかもしれませんが。

 

そして三点目、そのお酒の説明で用いられるキーワードも頼りにしています。

日本酒の名前は長いし、酔っぱらいが全部覚えて帰るのは難しいですよね。あるお酒を気に入ったときは「メロンのような果実感」「華やか」「フルーティー」など、そのお酒の説明に出てきたフレーズを拾って覚えておくだけで、詳しい人の知識を使って、また近い味わいのお酒に辿りつきやすいと思います。

「フルーティーとかフレッシュって説明される感じのお酒が好きなんですけど、この中だとどれがおすすめですか」。私は最初、この質問一本槍でした。その中で、なんか純米吟醸の生酒率が高いなとか、三重県奈良県あたりのお酒が特に好きかもとか、自分の好みが少しずつ具体的になってきたように思います。

 

 

あとはお酒自体の話ではありませんが、日本酒を飲み比べる上で助かるのは、ワイングラスで少量から飲ませてくれるお店。捗ります。

おちょこだとどうしても香りを感じにくかったり、せっかくよく冷やして提供されても体温で温まりやすかったりします。楽しく飲む場では何の問題もないですが、飲み比べる日はワイングラスで飲むことを試してほしいです。お店によってはメニューの記載が一合180ml単位でも、半合90ml以下の量をグラスで出してくれる場合があります。

 

はい。

いろいろ書いてきましたが、振り返ると結局全部、ミーハーな私はこうして特に知識を身につけることなく、粗い情報と他力本願で日本酒を楽しんでいますという恥ずかしい告白でした!

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

おやすみなさい。最近は一層雑に「愛山のお酒ありますか?」と尋ねるようになっているささやかでした。