私はイチゴが好きです。イチゴの中で、章姫(あきひめ)が一番好き。
「章姫」長い紡錘型の果実。果実が大きく、酸味も少ない。
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-360/shoukai/shizuokayasai/strawberry/variety.html
つまり、苺の中でも比較的大きくて甘い品種。もう少し詳しく特徴を書くとこう。
章姫は果実が長めの円錐形をしているのが特徴。ほとんどのイチゴは横幅のある円錐形ですが、章姫は縦長の円錐形です。果皮は濃橙赤色で、果実は少しやわらかめで口当たりがよく、果汁も豊富。酸味が少なく甘味をしっかりと感じられるイチゴです。
見た目は縦に長く大きめで、柔らかくジューシーな実は酸味が少なくしっかり甘い。
美味しそうに聞こえるでしょうし、実際に美味しい。だから一番好きだと最初から言っています。
なぜ突然章姫について語り出したかといえば、こんなツイートを見てしまったから。
苺狩りのとき一緒になった小3の女の子が苺狩りマスターで「紅ほっぺや恋みのりは真っ赤じゃないと甘くないけど、あきひめは上の方が白くてもすごく甘い。真っ赤じゃないからととらないひとが多いから、ねらい目だよ」と教えてくれた。その通りだった。スーパーでも、あきひめを買うようになったよ pic.twitter.com/He9dvyLpm7
— 太陽とケイコムーン (@amazakeiko) 2022年3月29日
このブログを書いている時点で、約3.3万件のいいねがついています。一体このうちの何人が「今度スーパーで見かけたら章姫を買おう」と思ったことでしょう。
残念ながら、普通のスーパーで章姫を見かける可能性は、章姫の産地近くに住んでいない限りあまり高くありません。
その理由は先に紹介した章姫の特徴にあります。柔らかい実は傷つきやすく輸送に向かないし、果汁が多くて足もはやい。
格別に美味しくて、それでいて特に高級な品種というわけではないけれど、決して安くはないイチゴなのです。あきひめ。
さて、30年前に静岡県で生まれた章姫は、20年ほど前に自らの血を引きつつ輸送性に優れた「紅ほっぺ」に県内生産量1位の座を譲りました。2017年に品種登録され、静岡県で先述のニ大品種に次ぐイチゴとして推されている「きらぴ香」も章姫の血を引いています。
今の静岡いちごのエースは紅ほっぺで、都内のスーパーでもよく見かけます。紅ほっぺときらぴ香はどちらも章姫より運ばれやすく、つまり章姫より表皮がかためになっている。確かに遡れば章姫がいますが、やはり別物です。
では前掲のツイートを見て章姫が美味しいことを知ってしまった人は、どうすればいいのでしょう?
静岡においでよ。
章姫がスーパーまで出てこないなら迎えに行けばいいじゃない、ということです。具体的に言うと、静岡でいちご狩りをするのがおすすめです。
章姫のいちご狩りは県内各地でできますが、個人的には県内中部・久能海岸沿いで楽しめる「石垣いちご」を特に推します。
「石垣いちご」の栽培当時はまだ、現在のような温室ハウスのない時代のため、自然の力を利用した栽培方法が開発されました。傾斜がある石垣は、平地に比べて多くの陽が当たり、熱が蓄積されるため、石垣の保温力を生かしたいちご栽培が可能に。さらに、水はけが良いため、うまみが凝縮された甘いいちごが育ちます。
まず、石垣いちごの主力銘柄は、他でもない章姫です。
そして久能海岸沿いの地域には、半漁村から石垣いちごというイチゴの生産地へ、さらに高度経済成長下の観光業の隆盛に伴って石垣いちごの観光農業空間へと、変化してきた歴史があります。静岡で晩年を過ごした徳川家康が祀られている国宝「久能山東照宮」がある久能山の麓に立地し、穏やかな駿河湾に面した南斜面という眺めの良さ、加えて景勝地として名高い日本平をはじめとした周辺の観光地の存在。イチゴが美味しく育つだけではない面白い場所です。
いろいろ書きましたが、特に何も知らずに行ってもいちご海岸通りで見える景色は綺麗だし、章姫は美味しいし、ぜひいちご狩りシーズン中に足を運んでみてください。
ちなみに一部の農園では、採りたての章姫をお取り寄せできるようです。狩りに行けない人、狩りに行ってハマってしまった人はぜひ。
章姫恋しさのあまり、チャットモンチーの拳銃みたいな気持ちになって感傷的なタイトルにしてしまったけれど、あんなこと言い出したら良いものを何も食べられなくなってしまうわね。撤回します。ぜひ知ってほしいです、章姫の良さを。章姫は来ない場所で待っていても永遠に来ないので、自分で探しに行って食べてみてください。
おやすみなさい。さやかでした
さっきまで触れられたのに
香り残し消えるなら
ずっと眠っている方がいい
♪ チャットモンチー「拳銃」