どんな言葉で君を愛せば|@oyasumitte

ハッピー賢者モードと人生イヤイヤ期を行ったり来たり

「絶対にイエスだと言いきれないなら それはすなわちノーである」

 

大学生の頃、インターンシップでお世話になっていた会社の上司からよく本を借りていた。読書好きの方々がわたしに勧めてくださる本は、どれも当時の私の好みや状況によく合っていたのだけれど、その中でも特に印象に残ったのは、書籍『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』だった。

 

 

読後、これは手元に起きたい本だと感じすぐに購入したのを覚えている。何度でも読み返して確認しながら、エッセンシャル思考を長期的に自分の軸としようと思っていた。

 

エッセンシャル思考は、より多くの仕事をこなすためのものではなく、やり方を変えるためのものである。(中略)

「やらなくては」ではなく「やると決める」。「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。

(グレッグ・マキューン(高橋璃子訳)『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』かんき出版,2014年,pp.14-15)

 

ところが、最近の私はといえば、できるだけ早く資格試験に合格したいと思いながら、できるだけ早くいい人と出会い結婚したいと真剣に考えていた。同時に目の前の仕事でもできるだけ評価はされたいし、できるだけ勉強もしたいけれどできるだけ友達と遊ぶ時間も欲しい。さらにはできるだけ婚活も進めないといけないような気がしていた。選択ができず、全部やろうとしていたのである。

年始に躓いた恋愛に関しても、結婚したいという気持ちがある以上は何かしていないといけないように感じて行動していた部分が大きい。この人がいいという決め手はないけれど恋人ができるチャンスを逃すのは惜しい気がするとか、断るのを申し訳なく感じるとか思いながら、気乗りしない誘いを予定に入れて、我ながら自分を見失っていると感じていた。

 

欲しくもない好印象を得るためにノーと言えなかったツケを払い、後悔と疲労感を抱えて帰宅し、何もかも中途半端な自分が嫌になった日曜の午後、ふと本棚の白い背表紙が目に止まった。『エッセンシャル思考』だった。

 

エッセンシャル思考とは、「すべてやらなくては」ではなく「やると決める」、やることをでたらめに増やすのではなく計画的に減らす考え方である。これを選んだ人は、本当に重要なことを見定め、自分の中に明確な基準を持って機械的に判断を下す。その基準を満たさなければチャンスに思える話にもいたずらに手を伸ばさない。

 

要するにエッセンシャル思考とは、自分の力を最大限の効果につなげるためのシステマティックな方法である。やるべきことを正確に選び、それをスムーズにやりとげるための効果的なしくみなのだ。

(グレッグ・マキューン(高橋璃子訳)『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』かんき出版,2014年,p.24)

 

最近の私は、資格の勉強も仕事も友達との交際も婚活も全部できるだけやろうとしていた。自分が本当に望んでいたのかもわからない機会さえ逃すのは惜しい気がするとか、断るのは申し訳なく感じてしまうとか寝言を言いながら。

しかしやはり、本書の言うとおり「絶対にイエスだと言いきれないならそれはすなわちノー」だったのである。

自分が“最”優先できることはいつも1つしかない。そのたったひとつの重要なことを自分で決めて、本質目標を定める。その後の無数の選択は、毎回本質目標に立ち返ってシステマティックに行う。選択肢に向き合うたびにひどく葛藤したり不安になったりしていたら、身が持たないばかりか結局正しい決断を下すこともできない可能性が高い。

 

私の場合、結婚は最も重要なことと本質目標との両方に関係がないものだと整理した。「乗り気じゃない今しなくてもいいかもしれないもの」程度に感じていた婚活は、はっきりと「今手を出すべきでないもの」になったのだ。若い方が婚活は有利だという可能性には目を瞑る。

そしてこれを「結婚を諦める」ととらえる代わりに「目標を優先し一途になる」と考える。必要なトレードオフを「どうすれば両方できるか?」と無視したり「何を諦めなくてはならないか?」と悲観したりするのではなく、「自分はどの問題を引き受け、何に全力を注ぐのか?」という問いにするのがエッセンシャル思考であるからだ。

 

 

さて、他人との関係性の中で生きるわたしたちが、自分でエッセンシャル思考をもって生きると決めたとして、自分の中に明確な基準を持ったとして。その時には大抵の場合、自らの中で弾き出された「ノー」という決断を、いかにして自分以外の他者に示すべきかという問題が浮かんでくるだろう。

断るのを申し訳なく感じてしまうとか寝言を言って、大体結局後悔している私のように。

 

そこで、自戒を込めて、本書の第11章「拒否──断固として上手に断る」に示されているいくつかのコツを書き留めてまとめとしたい。

 

上手にノーという技術
  • 判断を関係性から切り離す
  • 直接的でない表現を使う
  • トレードオフに目を向ける
  • 誰もが何かを売り込んでいると意識する
  • 好印象よりも敬意を手に入れる
  • あいまいなイエスはただの迷惑と考える
断り方のレパートリー
  • とりあえず3秒黙ってみる
  • 相手に歩み寄る代替案を出す
  • 「予定を確認して折り返します」
  • 自動返信メールをつかう
  • 上司には「どの仕事を後回しにしますか?」
  • 親しい間柄なら冗談めかして断る
  • 肯定を使って否定する
  • 別の人を紹介する

 

 

本書では、様々な詩や格言から印象的なフレーズが引用されている。今回ブログの冒頭に載せたのは、その中でも私が一番好きな言葉で、アメリカの詩人メアリー・オリバーの「The Summer Day」の一節だ。

 

教えてください、あなたは何をするのですか

その激しくかけがえのない一度きりの人生で

“Tell me, what is it you plan to do with your one wild and precious life?”

 

「あなたは何をするのですか」、この問いにドキリとした方や、箇条書きにした上手に断る技術が気になった方にはおすすめの本です。よろしければぜひ