どんな言葉で君を愛せば|@oyasumitte

ハッピー賢者モードと人生イヤイヤ期を行ったり来たり

もはや好意の返報性とかそういう次元ではなく

「不倫!」

私が妻帯者の先輩と2人で食事に行ったことを、不倫だと言い切った女の子たちがいた。彼女たちは私の同僚で、年も近く社内では最も気の置けない存在になる予感があった。だからこそ私は彼女らに「社内の○○さんと食事した」と打ち明けたという経緯があるのだけれど、その話は部署内を巡り、女の先輩の耳にも入ってしまったらしい。「不倫!」と断じられた事自体は不倫の基準は人それぞれだなあとのんびり笑っていられたのだけれど、仲良くしている(と私は思っている)同僚の行為を不倫だと思いながら社内の他の人に喋ってしまうのは一体どういう心理なの……という戸惑いもあった。いよいよ暢気に笑っていられなくなったのは、先輩方からチクリと刺された時だ。

「奥さんはごはん作って待ってるんだよね?悪いと思わないの?」

「私だったら自分の旦那さんが、旦那さんをかっこいいって言ってる部下の女の子と二人きりでいるなんて気が気じゃない」

これらが正論だとは思わなかった。

既婚男性である先輩に妙な懐き方をしている私がそもそも悪いのかもしれないけれど、それでも具体的に誘いを持ちかけてくれたのは先輩だし、そうして約束していた日にもし奥さんにごはんを作らせていたのならそれは先輩の落ち度であるはずだ。

女の子と二人なんて心配でたまらないという話だって、私のことをどう話すのか(あるいは話さないのか)は先輩が判断するべきことだと思っている。奥さんの心情を慮るのは先輩の仕事で、私のそれではない。

 

そう考えたところで、妙に自分を正当化する言い訳が上手くなってしまったことに気づきハッとした。少し前まで私はちゃんと、彼女や妻がいる人と二人きりになることに、罪悪感を抱く側だったはずなのだ。

いつだったか、私は誰かに「彼女がいる人に誘われているけれど、彼女の気持ちを思うと行くのが憚られる」と相談したことがある。そこで返ってきた「彼女の気持ちを考えるのは男の仕事だから君は勝手に心配したり気に病んだりする必要はない」という助言を、当時の私は受け入れていないつもりでいた。

でも一度受け取った言葉はちゃんと私の中にあって、だから先輩に食事に誘われたときに私はその言い訳を引っ張り出して、迷いなく頷き、尻尾を振ってついて行ったのだ。

今書いていて思い出したが、私に上記の助言をしたのは遊び慣れた男性たちだった。私のように人の言葉に影響されやすい自覚がある人には、目にしたり耳にしたりする情報に人一倍自覚的であろうとすることを勧めたい。遊び人が遊びを正当化するために持ち出す理論はいつもどこか胡散臭いなと思った私の気持ちはスリーパー効果*も働いたのか隅に追いやられ、半信半疑で聞いていたはずの「彼女の気持ちを考えるのは男の仕事」論はすっかり今の私の真ん中におさまってしまった。

*スリーパー効果 sleeper effect
信頼性が低い情報源から得られた情報であっても、時間の経過とともに信頼性の低さがもたらすマイナスの効果が消え、コミュニケーション効果(意見変容、態度変容など)が時間の経過とともに大きくなる現象をいう。情報源の信頼性の忘却のほうが、情報内容の忘却より速いためにこのような現象が起きる。仮眠効果、居眠り効果などと訳されることもある。情報源の信頼性が眠ってしまうという意味でこの名が付けられた。

スリーパー効果とは何?Weblio辞書

結婚されている先輩と2人で食事に行ったことがそれだけで不倫であると、やっぱり今の私は思わない。思わないし「奥さんに申し訳ないから……」なんて変に遠慮して好きな先輩と2人で話せる機会を見送ったところで、変に我慢した自意識を拗らせるだけできっといいことはないと思う。そうやって「行きたい」と思う自分の気持ちを曲げて断って、誰かのためと擦り減らした分の歪みは着実に積もっていく。そんな我慢を誰が褒めてくれるわけでもないし、褒められたとて埋まる穴でもない。

 

ところでどうして私、不倫だと思わないことを不倫だって言われたくらいでこんなにムキになってるんだろ。楽しかった時間に難癖をつけられて、憧れの先輩との関係に変なレッテル貼りをされたような気がしてしまったからかな。

私が先輩に憧れると公言していること自体を訝しく見る同僚もいるのだけれど、でもこれだけセクハラだのパワハラだのMetooだのが騒がれ、それによってキャリアを失う人が絶えない今の世界で、まともな男の人って自分の誘いが相手を不快にさせないという余程の自信がない限りは職場の女を個人的に誘えないはずで。

もはや好意の返報性云々とかそういう次元の話ではなくて、こちらから常にある程度の好意を示しておかないと、セクハラやパワハラを絶対にすまいと思っているまともな男の人とは仲良くなれないのだ。男の人が生き辛い社会は女も生き辛い。

自分の誘いが相手を不快にさせないという余程の自信を男性に持ってもらうには、女である私が相手にとって「かっこいいとか憧れるとか言って懐いてくる後輩」になるのが一番確実な方法だと考えている。先輩に好意を示す理由はそれだけだ。それだけ。

それだけ。うん。それだけです。不倫はしません。

 

こんな調子で、ただ仕事が楽しいだけの日々ではなくなってきた最近ですが、何とか元気にやっています。ブログをサボっていた間に出かけたり本を読んだりと、インプットしっぱなしで自分の中に放置していたものがそこそこあるので、次はもう少し真面目なモードで誰かの役に立ちそうなブログを書きたいなと思っております。

久しぶりに本も紹介したいな。恋愛だけがコンテンツなメンヘラだと思われてしまうのは、正直とても寂しいので。

最後までお読みいただきありがとうございます。おやすみなさい。さやかでした。