「さやちゃんって,毎日がデートって感じ!」
これは今から2年ほど前,大学で体育の授業をとっていた頃の話である。
私は武道系を選択していて,女子の少ないクラスだった。
当初知り合いは一人もいなくて,友達の友達だった女の子に話しかけられて仲良くなった。
室内の種目だったし,専用の衣装を貸し出されたので,大学にスウェットやジャージを着ていく必要も持っていく必要もなかった。
私はもともと,所謂「モテ服」の系統が好きだった。
膝上〜膝丈の花柄のワンピースを着たり,シフォンのブラウスにオーガンジー素材のフレアスカートを合わせてパンプスを履いたりするような……
女子アナの衣装を思い出してください。それです。
それは別に当時の彼氏の趣味ではなかったし,私のまわりにいる男からももっとカジュアル寄りな女子のファッションが好きだと聞かされていたので,モテを狙いにいったわけでもなく。
自分が好きな服を,ただ毎日着て大学に通っていた。
体育の授業がある日も同じだった。
運動ができる格好をしていく必要がなかったから,ワンピースを着て大学に行った,それだけのことだ。
でも不思議なことに,他の女の子たちはなぜかジャージやスウェットで更衣室に現れた。
そして何度目かの体育の前,更衣室で会った友達の友達が私に言った言葉が,冒頭のそれである。
「さやちゃんって,毎日がデートって感じ!」
ちゃんとおしゃれしてきて偉いよね,と彼女は言った。
いつもデートに行きそうな格好をしていてすごい,と。
なんとなく,自分が浮いているなとは思っていた。
そもそも好みが違うのだ。
私の周りには,あまり同じ系統の服を着る人がいなかった。
色で言えば私は白や淡色が好きで,しかも黒が極端に似合わない。
似合わないから着ない。
好きな色を着ていたら似合うと言われて,買い足すものもどんどんそちらに寄っていった。
でも黒や濃い色,もっとカジュアルだったりマニッシュだったりする服装が好きな女子から見ると,私の装いは男が好きな服を着ているように見えたらしい。
特別おしゃれをしていたつもりはない。
ただ、好きな服しか持っていなかった。
通学用と飲み会用とデート用で,それぞれ服を分ける必要性を感じていなかっただけだ。
いつも,好きな服を着ていたかった。
「大学に来るだけの服装がデート服だよね」と,友達の友達に指摘されてから程なくして。
今度は直接言葉をかわしたことはなかった同じ学部の女の子から,講義の合間に「さやかちゃんっていつでも合コン行けそうな服着てるよね」と笑いながら言われた。
恥ずかしくて,消えたくなった。
二人とも,悪意はなかったはずだ。
おそらく。
デリカシーには欠けるというか,私たちの関係性を鑑みると随分踏み込んだことを言われたなあとは思うけれど。
そしてしつこいようだけれど、私はずっとただ自分の好きな服を着ていただけだ。
それも,特別奇抜な服ではない。
ただ女らしさが強い服だった。
よくそんなにヒール高い靴を履いて頑張るね,と女の子に感心顔で言われたこともあった。
べつに頑張っているつもりはなかった。
ただその子を含め私の周りにパンプス派の女子が少なかっただけだし,何よりも単純に,私は踵の高い靴が好きなのだ。
身長が低いから意地になって高い靴ばかり履いてきて,むしろヒールがないと落ち着かなくなってしまった。
ぺたんこのバレエシューズよりもスニーカーよりも,私はハイヒールが好きだった。
そういえば就活用のパンプスも高さが中途半端で落ち着かなかったな。
おかげさまで随分低いパンプスにも慣れまして,最近は5cmくらいまで選択肢が広がったとかいう話はどうでもよくて。
洋服に話を戻すと,彼女たちの言う「デート服」は一般的に素材やつくりが繊細で,着るときにも洗うときにも些か気を遣う必要がある。
当然普通に洗濯はできないので基本は手洗いか,それすら難しそうな場合はクリーニングに出す。
私はそれを面倒だとは思わなかったし,系統が変わった今も相変わらず1枚ずつ手洗いするしかない服を着ている。
もはや趣味だ。
服を着なければいけないから着て,洗濯をしなければいけないから洗濯をするのではない。
服を探し,選び,買って,着て,手間をかけて洗うまでのすべてが趣味なのだ。
私は、趣味を着ている。
……えっと,何の話?
長ったらしく話してきた中で何を言いたかったのかというと,
女らしく装うのが嫌な女はやめればいいし,
スカートは履きたくないなら履かなくて良いし,
パンプスを履きたくないなら履かなくていいし,もし履くことを強いられる環境にいるなら,女ばかりにパンプスを履かせるな!って好きに活動してくれたら良い。
本当につらいならそうするのが良いと思います。
でも,好きで100%女な服を着てスカートをひらひらさせてヒールを履いて歩く女に,男の視線を意識している女だという偏見に満ちた視線を向けるのはやめてほしい。
やめてくれないなら,好きで100%女な服を着てスカートをひらひらさせてヒールを履いて歩く女に男の視線を意識している女だという偏見に満ちた視線を向ける前時代的な人間だという偏見に塗れた視線を返します。
私がこれまでいた環境が多少特殊だったこともあるし,ちょっとデリカシーが足りない人とぶつかってしまっただけのような気もするけれど。
それでも,女らしくあるということを,当然のように男性に絡めて考える人が多いのは事実だと思うのです。
女らしい服が好きじゃないなら着なくていいよ。
「さやかちゃんは似合うからいいよね〜!私には無理だあ😂」なんてマウントは必要ないよ。
好きで黒を着てるんでしょ?
好きでパンツを履いてるんでしょ?
好きでマニッシュな格好してるんでしょう?
あなたは,スニーカーが好きだから,スニーカーを履いてるんでしょう?
私だって
「好きだから」スカートとワンピースばかり選んで着ているし,ヒールのある靴しか履かないし,
「好きじゃないから」デニムを履かないんだよ。
全く同じことでしょう?
同じ理由なのに,どうして女らしいものを選ぶことに対してだけ「男の視線を内包した女の視線」が向けられるの?
コルセットが嫌な女は勝手にコルセットを外して。
でも,コルセットから解放された後もコルセットを使い続ける女に,外すことを強制しないで。
好きでウエストを締め続ける女もいるのだということは,どうか忘れずにいてほしい。
…というわけで,今回は私が人に言われた言葉を忘れられない自意識過剰オンナであるという話でした!
ハア〜我ながら面倒くさくて生き辛いね〜!
そういえば服の系統が美人百花系とか女子アナ系から離れたのは骨格診断がきっかけだったので,PC診断・骨格診断・印象診断を受けた話も近いうちに書きたいと思います。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。
さやかでした。